劇評 18/19+

劇評のブログです

演劇

青年団 平田オリザ・演劇展 vol.6『走りながら眠れ』

この作品には、ある夫婦が過ごした、最後の夏の数日が断片的に描かれています。 夏の日。妻が鼻歌を歌いながらお茶を飲んでいるところへ、パリにいるはずの夫が帰宅する場面から、この作品ははじまります。 そして妻は、いつもそのようにしていたのか、それ…

東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』

対面客席のあいだを貫く長細い舞台に額縁状の柱と梁の構築物が立っている。床には1930年代から現今にかけてのさまざまな時代の遺物、たとえば家具、衣類、電化製品、こまごました日用品、さらにおびただしい数の新聞紙が散らばっている。一大事の過ぎ去った…

渡邊守章『繻子の靴』 四日間のスペイン芝居

『繻子の靴』を見た。 本当はそう胸を張って言いたいが、実際にそれを「見た」と言えるのか、正直あまり自信がない。 別に目を閉じ続けていたわけでもなく、まして眠っていたわけでもないのだが、上演時間8時間の舞台を見るといった経験は、隅から隅まで見尽…

藤田貴大『BOAT』

演目:東京芸術劇場『BOAT』(作・演出:藤田貴大(マームとジプシー)) 評価:★★★★★★★☆☆☆(7/10点満点) 「演劇」は「劇場」を爆破し/そして「歌」へと近づいていく 森山 直人 1 どこか歌のような作品だ。もちろん、どういう意味で「歌」と考えるべき…

ベルリン・シャウビューネ『民衆の敵 An Enemy of the People』

イプセンのテクストを用いて「経済」があらゆるものを押し流すという現代の状況にアプローチすること。ふじのくに せかい演劇祭2018の公式プログラムとして上演されたベルリン・シャウビューネ劇場『民衆の敵』は、そうしたねらいをもつ作品だった。もちろん…

クロード・レジ『夢と錯乱』

《フランス演劇界において、もっとも正統的かつ過激な演出家であるクロード・レジ》が演出する《最後の作品》として、《オーストリアの夭折の詩人》であるゲオルク・トラークルの《自伝的エクリチュール》を使用した『夢と錯乱』は、ふじのくに⇔せかい演劇祭…