劇評 18/19+

劇評のブログです

青年団 平田オリザ・演劇展 vol.6『走りながら眠れ』

この作品には、ある夫婦が過ごした、最後の夏の数日が断片的に描かれています。 夏の日。妻が鼻歌を歌いながらお茶を飲んでいるところへ、パリにいるはずの夫が帰宅する場面から、この作品ははじまります。 そして妻は、いつもそのようにしていたのか、それ…

ジョン・グムヒョン『リハビリ トレーニング』

KYOTO EXPERIMENT 2018で上演されたジョン・グムヒョン『リハビリ トレーニング』は、きわめてシンプルな没入型の(immersive)パフォーマンスだった。フラットなホールには、トレーニングベッド、リフトマシン、歩行訓練用の機器、装具や固定用ベルトをのせ…

akakilike『家族写真』

1 クラシックバレエと鏡 アトリエ劇研で行われた初演の際の終演後、過去にakakilikeの作品にも出演したことのある、3歳からクラシックバレエを習っていたダンサーが、泣きながら倉田に話しかけていた。同じ劇研での上演では、泣くかわりに、具合の悪くなっ…

東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메 カルメギ』

対面客席のあいだを貫く長細い舞台に額縁状の柱と梁の構築物が立っている。床には1930年代から現今にかけてのさまざまな時代の遺物、たとえば家具、衣類、電化製品、こまごました日用品、さらにおびただしい数の新聞紙が散らばっている。一大事の過ぎ去った…

ブルーノ・ベルトラオ『イノア』

演目:グルーポ・ヂ・フーア『イノア』(ブルーノ・ベルトラオ作) 評価:★★★★★★★☆☆☆(7点/10点満点) ブルーノ・ベルトラオは魅力的だが、この程度の成功でとどまってはいけない 森山直人 1 結論から言おう。この作品は素晴らしい。いや、それどころか、…

渡邊守章『繻子の靴』 四日間のスペイン芝居

『繻子の靴』を見た。 本当はそう胸を張って言いたいが、実際にそれを「見た」と言えるのか、正直あまり自信がない。 別に目を閉じ続けていたわけでもなく、まして眠っていたわけでもないのだが、上演時間8時間の舞台を見るといった経験は、隅から隅まで見尽…

藤田貴大『BOAT』

演目:東京芸術劇場『BOAT』(作・演出:藤田貴大(マームとジプシー)) 評価:★★★★★★★☆☆☆(7/10点満点) 「演劇」は「劇場」を爆破し/そして「歌」へと近づいていく 森山 直人 1 どこか歌のような作品だ。もちろん、どういう意味で「歌」と考えるべき…

ベルリン・シャウビューネ『民衆の敵 An Enemy of the People』

イプセンのテクストを用いて「経済」があらゆるものを押し流すという現代の状況にアプローチすること。ふじのくに せかい演劇祭2018の公式プログラムとして上演されたベルリン・シャウビューネ劇場『民衆の敵』は、そうしたねらいをもつ作品だった。もちろん…

クロード・レジ『夢と錯乱』

《フランス演劇界において、もっとも正統的かつ過激な演出家であるクロード・レジ》が演出する《最後の作品》として、《オーストリアの夭折の詩人》であるゲオルク・トラークルの《自伝的エクリチュール》を使用した『夢と錯乱』は、ふじのくに⇔せかい演劇祭…

プロフィール

森山直人(もりやま・なおと)1968年東京生まれ。演劇批評家。京都造形芸術大学舞台芸術学科教授。同大学舞台芸術研究センター主任研究員、及び機関誌『舞台芸術』編集委員。KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長。京都芸術センター運営委員。…

はじめに

はじめに 長澤慶太さん、新里直之さんと、3人で劇評を発表するこのサイトを立ち上げることになりました。 少なくとも当面は、それぞれが、それぞれの見ることのできた作品について、自由に、できるだけ率直に書くことだけを目標に進めていきたいと思います。…